新生児外科部門の主な対象疾患は先天性横隔膜ヘルニア、肺嚢胞性疾患、臍帯ヘルニア・腹壁破裂、消化管穿孔、食道閉鎖、腸閉鎖、ヒルシュスプルング病、直腸肛門奇形、水腎症などであり、年間40~50例の新生児外科の手術実績があります。またHFO、NO吸入、ECMO(人工肺)、血液透析などの周産期医療の対応が充分可能であり、近年の新生児外科手術の治療成績の向上に貢献しています。現在の規定病床は6床ですが、周産期母子医療センター全体の共通床が4床あり、また急患に関しては集中治療部(ICU)とも連携をとり、北部九州の新生児外科の拠点として重症例を受け入れています。
先天性横隔膜ヘルニアは、現在の周産期医学の発達の中にあって、未だ成績が十分に上がっていない病気です。人工呼吸法の工夫(HFOなど)や一酸化窒素(NO)ガス吸入療法、体外式人工膜型肺(ECMO)を用いた治療など最先端の治療が行われています。特に出生前に診断される本症は、全国の主要な新生児外科を扱う施設で成績向上のための工夫がされています。
当科では、本症の成績向上に重点を置き、これまで様々な治療の工夫を行ってきました。出生前診断された本症に対して、2003年までは帝王切開時の胎児鎮静化(赤ちゃんを眠らせて出生させる方法)とできるだけ早期の手術治療を中心に行ってまいりましたが、その成績は生存率で60%程度でした。そこで、新たに2004年から、今までやってきた集学的治療に加えて、Gentle ventilationと循環状態の安定化を十分に行ったうえでの手術に切り替え、その成績は飛躍的に伸びています。2004年以降に出生前診断されて当科で治療を行った本症90例のうち、重症心疾患や奇形症候群などを合併している症例、両側横隔膜ヘルニアを除外した70例における生存率は91.4%です。
特に重症例は地域で集約化されて、経験症例数の多い施設で治療を行うことが、さらなる治療の向上につながると考えられており、当施設も九州一円より胎児期からご相談いただき、出生前からご両親との面談を行っています。先天性横隔膜ヘルニアに関して、お知りになりたいことがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
従来大きく切開創をおくことが普通とされてきた新生児外科疾患に対して、当科では臍部半弧状切開アプローチにより手術を行い、現在までに肥厚性幽門狭窄症、腸閉鎖症、十二指腸閉鎖症、十二指腸狭窄症、卵巣嚢腫、腸回転異常症、腸管部分拡張症に対して施行しています。全例において術中、術後の合併症を認めず、写真に示すように術後の臍部の外観も良好であり、術後には全く創部が目立たない状況です。整容的な面からも有用で長期的、精神的なQOL向上が期待できる手法です。



胸部疾患においても同様に大きく切開創をおくことが普通とされてきた先天性食道閉鎖症、先天性肺気道奇形(CPAM)/先天性嚢胞状腺腫様奇形(CCAM)、肺分画症などに対して当科では、腋窩皺切開により手術を行い、術後には全く創部が目だたず、筋肉の切開も行わないので胸郭の変形等もなく、患者さんやご家族に好評です。



生まれつき腸が短い病気や、腸を大量切除しなければならない病気のため、小腸が短くなり、栄養分の消化吸収ができないものを短腸症候群といいます。小児では先天性腸閉鎖症、腹壁破裂、腸回転異常症にともなう腸捻転などが原因で、大人では腸の血管がつまる腸間膜動脈血栓症、腸捻転、外傷、腫瘍などが原因となります。
こういう患者さんは、腸からの消化吸収ができないため、栄養不良となり、体重減少や成長障害や脱水になるので、点滴による栄養(静脈栄養)を続ける必要があります。しかし長期間、点滴を続けると、点滴を継続するのに必要な太い静脈(中心静脈)がつまったり、肝臓に負担がかかり肝硬変になったり、点滴ルートからの感染により敗血症になったりします。そこで、こういった静脈栄養の合併症を防止し、口から食べれるようにするには、腸の機能を早く改善する必要があります。そこで当科では、短い腸を長くする「腸管延長術」を行っています。これは図に示すように、腸管に互い違いに切れ込みをいれて短冊状にすることで腸管の長さを長くし、吸収面積の増加と通過時間を長くすることにより、消化吸収の改善をはかる手術です。正式な名称はSTEP手術(Serial Transverse Entero Plasty)といいます。手技が比較的簡単で、安全に行われる手術です。

我々はこの手術を小児の腸捻転および先天性腸閉鎖症による短腸症に対して、生後平均8.7ヶ月で施行し、腸の長さを平均11.8cmから18.3cmに延長することができました。その結果、それまで経口摂取不能で、肝機能障害があり体重増加がみられなかった患者さんが、口から食べることが可能になり、、黄疸が消失し、体重増加が得られ、点滴からの栄養量も徐々に減らすことに成功しています。